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2024/04/27 02:08 |
胡蝶の夢(5)

・・・か・・さ・

(僕を呼ぶのは、だれ?)

・・・かず・・・

(違うよ、ぼくはイチ。カズなんて呼ばれない。)


だけれど自分を呼ぶ声だと一恵には分かっていた。
天地の分からない世界で一恵は声に耳を澄ませる。
断続的に聞こえる声は自分の知らない人の声で、けれどどこか安心する。
感じたことの無い感情を胸に起こす、不思議な声だった。

・・・わたしは・・・いてあげる

・・・あなたのそばに、いてあげる・・・

包み込まれる感覚と同時に地に足が着いて、一恵は衝動的に走り出す。
ただ闇雲に、この世界を脱してあの声にたどり着く為に。
その声に縋りたかった。

・・・ずっと、ずっと・・・

一恵の欲しい言葉をくれる、声の主は果たして天使か。
美しい声で甘言を弄して惑わすのは悪魔か。

そんな者誰だっていい。
今、一恵のそばに居てくれるのならば、天に召されようと悪に魂を売り渡そうとも、一恵にはどうでも良かった。

ふわりと柔らかい体温に包まれて、まぶたに熱を感じた。
声の主に抱かれて、口付けをもらった本体は、もうすぐ夢から覚める。
自分のまぶたが緩く開いてく先で、よく見知った女が笑いかけていた。



目を開けるとまだ夜明け前で、部屋の中は暗かった。
目覚める一瞬前、誰かを見たような気がしたが、一恵には思い出せない。
薄暗闇の中、枕もとの時計を引き寄せて、少し早いが朝の仕度をしようとベッドから這い出した。
昨日はショックが大きすぎて何も考えられなかった。小さな子供のように泣き寝入って、全く恥ずかしいことこの上ない。
一恵は制服のネクタイを締めながら部屋の扉を開けた。
ふと廊下に並ぶ扉の一枚に目が留まった。二美の部屋だ。
あの後彼女はどうしたのだろうか、一恵の様子を見に来てはくれたのだろうか。一恵のことを、気に掛けてくれただろうか。
まるで寂しがり屋の小さな子供の感覚で、一恵はハッと気付いて思考を止めた。
足早に二美の部屋の前を通り過ぎ、階段を駆け下りていく。

兄なのに、妹が自分をかまいに来てくれる事に期待してるなんて、格好悪い。

二美の顔を思い出して、気まずい思いがした。
昨日のことも含めて、当分は顔を合わせられない気がする。
だけどこのままにしておけるはずも無く、一恵は彼の顔を思い出す。
途端に口の中に苦味が充満して、腹の底からせり上がってくる何かを喉の奥で押し留めた。
不思議と怒りや憎しみは湧かない。
一緒に居た時間が長かったせいだろうか。
一恵は彼の真意を知りたい。
考えるのはそれからだ。

まだ寝静まる家中をそろりと抜けて、送迎の車だってまだ運転手も起きていないはず。
一恵は通学鞄を掴んで家の門扉をすり抜けた。

朝陽は屋敷の屋根に稜線を描き輝いていた。
アスファルトの上は黄色い光が照り付けて、一恵の影が長く延びていた。



^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

忘れた頃にやってくる、パラレル春日第5弾!!
定期的にやってたわけじゃなかったんやけど月イチになってたようで。
しかし今回のトラブルですっかり忘れていたわけで。
いや~、こんなん誰も見てないやろ~と思いつつ、更新できるっつったらこれしかないんでやろっかな~って思ってた矢先に拍手に嬉しいメッセージを頂いて、姉ちゃんの寝てる間にこっそりカチカチ。
タイピングの音がうるさくて、私にはやっぱりノートが向いてるわ、デスクトップはあかんわと思わされた。


テーマは胡蝶の夢なので、さて誰の夢にリンクしてるのやら。
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2007/07/22 12:49 | Comments(0) | TrackBack() | 小説ネタ帳
胡蝶の夢(4)
そろそろ夕食の時間も近づこうかという頃に、ようやく両親は帰ってきた。
バタバタと慌しく入ってきて、母親は夕飯の仕度をしだす。
「ごめんなあ、今日来る言うとったけど外せん用事が入ってなあ。」
父親は客の相手にまわるらしく、尊と一恵が居るリビングに足を運んできた。
「こんにちは、ご無沙汰しています。」
「お帰り。」
尊は手を止めて父の方に向き直った。
遊び相手をとられた一恵は面白くなさそうに唇を尖らせた。
しかし尊にだって大人の付き合いというものはあるのだから、仕方がない。ここで一恵が子供の我儘を押し通せば、迷惑をこうむるのは他ならぬ尊であるし、そんなことをするほど一恵も幼くはない。
「二美は?」
「部屋。」
いつも一緒にいるはずの双子の片割れが居ないことに訝しんだ父から簡潔な疑問を、一恵は簡潔な答えでもって返す。
尊と一緒に父の後についてソファに腰掛けた一恵は、二階から二美がパタパタと足音を鳴らせて下りて来るのを聞いた。
「おとーさん、おかえりっ」
台所の方へ駆けて行く姿が一瞬だけ掠めて、二美の声が流れて届いた。
母親を手伝いに行ったのだろう。
自分も手伝いに行かなくてはと、一恵は腰を上げる。
くつり
隣で尊が笑った気がした。


食卓は一人増えただけなのに、いつもより賑やかだった。
6人分の食事と食器がテーブルに所狭しと並べられ、止まることなく音を鳴らしている。
暫く来なかった尊は母にあれやこれやと近況を報告させられて、年齢の話から結婚の話題に到達すると、身を固くして曖昧な笑顔を浮かべていた。
いつもとどこかぎこちない尊の様子に、一恵はただなんとなく不思議に思う。
「なあ、今日のあーちゃんどっかおかしいなあ。」
同意を求めるように隣に座る二美に話を振ると、二美もぼんやりしていたようで一恵の呼びかけに遅れて返事する始末。
「あ、え?なに?」
全く話にならないと、一恵は途中で話しをやめた。

いつもは食事を終えた者からリビングに移動していくのだが、今日は尊が改まって話があるというので一恵をはじめ子供らは部屋に追いやられた。
だが予想に反して尊が皆に聞いて欲しいと申し出るので、リビングのソファではなく応接室のソファに移動することになった。
初めに父がソファに掛けると、その隣に母、向かいに尊が座り、一恵は三子の手を引いて、母の傍でソファにもたれかかった。
最後に入ってきた二美は、一旦部屋の中を見回して、戸惑うように尊の横に腰掛けた。
二人がまとう雰囲気が、どうしてだか同じような気がする。
顔を見合わせた尊と二美に、直感のようなものを感じた。

尊が口を開く前に一恵は叫んだ。
「俺は認めへんぞ!」
「一恵!」
身体が憤怒に蝕まれたように、熱く渦巻いている。握り締めた拳は、内なる感情をもてあました現われか。
憎しみに満ちた眼差しを投げかけるのは、片割れを自分から引き離す相手だけではない。
自分から離れていこうとする片割れにも。

しかし彼女から返ってきたのは挑むような眼差しではない。兄弟だから喧嘩することは毎日のようにある。一恵が憎しみをぶつけたら、彼女も負けじと怒りをぶつけてくる。
さんざん互いに罵りあった後に、何事もなかったかのように自然と仲は元通りになっている。それが日常だった。
だから今回もいつものように鋭い眼差しが返ってくると思っていた。
だが二美が瞳に宿す感情は、悲しみ。
一恵の激昂に耐え切れず、瞳を伏せてそれでも涙をこらえていた。
一恵はそんな妹の眼にショックを受けた。だけれど二人の仲を許せるはずもなく、もう二人を見ているのも嫌で、部屋を飛び出した。
「一恵!!」
二美を始め、部屋に居た皆が彼を呼び止めたが、かまうものかと一恵は駆けた。
階段を一段飛ばして駆け上がり、突き当たりの自分の部屋に入るとベッドに潜り込んだ。
枕を抱いて上から布団を被って、外界から一切を遮断した。


この心に渦巻く感情を一恵は知りたくはない。
弱い自分は嫌いだ。弱い自分は認められない。
明日起きたら全てが夢で、いつも通りに二美が笑っておはようと言ってくれる。
二人はいつも一緒で、いつまでも一緒のはずだ。
一恵は、独りになんかならない。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

忘れた頃にやってくる春日パラレル一恵ワールド。第4弾。
寂しがりやな一恵たん。
一恵が飛び出して行ったあと、応接室では気まずい雰囲気で尊君が両親にご挨拶をします。
友三んはショックで一恵並みに取り乱しますが、大和さんの手綱さばきが上手いので部屋を飛び出したりはしません。
大和さんは昔の約束が果たされたと感無量。因みに尊君は昔の約束覚えていません。十歳やそこらの子供の記憶、25にもなって憶えてます?無理よね。

まだまだ続く

2007/05/27 22:17 | Comments(0) | TrackBack() | 小説ネタ帳
胡蝶の夢(3)
「あーちゃん」こと水流尊(つるたかし)は元々、一恵らの両親及び祖父の知り合いで、世間によく名の通った総合商社の御曹司なのだ。
一恵や二美には生まれた時から現在に至るまで、よく遊び相手を務めてもらった慣れ親しんだ『お兄さん』の位置に当てはまる。
良家の子息らしく、物腰柔らかで滅多なことでは怒らない温和な人柄であるが、仕事に関しては実に有能であるらしい。
一恵の尊敬する祖父も、尊には大変目を掛けているようである。

祖父の後継を目指す一恵としては、その祖父に認められた尊を目標にするとともに、いずれは越えねばならない存在と認識している。
しかし一恵は彼にとってプライベートの人間であり、その為に一恵はいまだかつて彼の仕事の顔を見たことがない。
見たことがないだけに、幼い頃から抱いている親愛のみしか今は抱けない。
彼の仕事の顔を見れば、きっと今までの認識を改めて、彼に今までの甘えた感情を抱けなくなると思う。
それが一恵には怖くもあり悲しくもあった。


ゲームに夢中になる尊の横顔をそっと盗み見た。
いつもニコニコしていて、滅多なことでは怒らないが、掛け値なしに甘いわけでもない。
物の分別をわきまえており、一恵や二美が道理に逆らうことをしても困った顔をして穏やかに諭した。
知的好奇心が旺盛な時期の一恵や二美の、両親でも辟易する「なんで?」攻撃にも、尊は時折言葉を選びながら気長に話してくれた。
その殆どが一恵の好奇心を満たす説明で、なるほど今にして思えば彼は非常に賢い少年だったといえる。
加えて子供の扱いにも長けていて、今の一恵が同じように幼児に対応できるかと言われれば、一恵には自信がない。
そんなことで彼に対して劣等感を抱くことはないが、彼の賢さに世話になった身としては手放しに感心することもできない。

二人で夢中になったゲームは一区切りを終え、丁度再戦といったところだった。
屋敷の廊下を誰かが歩く音と一恵が気付いた途端に聞こえた帰宅の声。
そして二人の前に現れた制服姿の二美の姿。
二美が一恵よりも遅く帰ってくることは珍しかった。一恵は成績優秀なので、高校に入学した時から生徒会の仕事や役員の仕事を任され、帰宅時間が自然と遅くなる。対する二美は気ままな新一年生なので全く何の用事もなく、己の気ままに帰って来ることができる。
今日はたまたま何の用事もなかった一恵なので、真っ直ぐ帰ってきたら二美よりも早くなった。同じ時間帯に帰っているはずの二美なのだが今まで何をしていたというのか、心配するのは兄として当然のことといえる。
しかしあまりうるさく言っても、父親のようにうっとおしがられるので、一恵は後でそれとなく聞こうと思った。
「二美おかえり。あーちゃん来てるで。」
「おかえりー。」
一恵と尊は一旦ゲームをストップして、顔を覗かせた二美を見た。
昔から尊が来ると飛んできて、べったり傍を離れようとしない二美なのだが、今日は一度大きく目を見開いたかと思ったら、きまりの悪そうな顔をして自室に向かってしまった。
踵を返す直前に「いらっしゃい。」と素っ気無い言葉だけを送って。
「なんや、アイツ。」
いくら馴染みの尊といえども些か失礼な言動に、一恵は眉根を寄せた。
いつもは誰に対しても礼を欠かないよう厳しく躾けられており、それを実行し続けてきた一恵には同じく躾けられた二美の態度が腑に落ちないのだ。
何故あんなにも余所余所しいのか。
暫く尊は佐想家に足を運んでいなかったが、その分双子で彼に会いに行っていたし何かが変ったというにも彼は普段通りだ。
首を傾げながら、ゲームを再開するべく尊に振り向いた。
けれど尊の視線は一恵に向くことはなく、二美の去った後を眇めた目で追っていた。

尊が我に返ったのは、一恵が勝手にレースゲームを再開して、ぼんやりしていた尊の機体が大破してからだった。


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忘れた頃に続くパラレルワールド短編。
水流尊の人となり。
でもこのあーちゃんはいたいけな少女に手を出す鬼畜野郎です。
油断して騙されてはいけません。(何が)


えー、とある異世界迷い込みのネット小説を読みました。その中で主人公が飼っていた犬のことを思い出すシーンがあるんですけど、泣くほどの事でもないと思うんです、けど泣いてしまいました。
動物(特に犬)の話にはとんと弱いです。忠義な犬の話はあまり好きではありません、だって悲しくて泣いてしまうから。
逆に動物虐待の話ははらわたが煮えくり返ります。動物の命を軽んじて無体なことをする輩は、同じ目に遭って死ねばいいと思います。おっと過激発言でしたかな?
でも、自分も同じ目に遭わなけりゃ、他人の痛みを理解できない人間が増えてきているのもまた事実。
無知は罪であることを知らない人間が多すぎる。
ホームレスを殺すことが正当であると言った高校生はどこへ行ったか。
高校で道徳を教えるという話だが、親の道徳観念はどうなっているんだろう。そういうものって、家庭の中で育まれていくものではないのかな。
おっと、なんだかいつもと様子が違う日記になってしまいましたよ。
犬の話からどこへいってしまったんだか・・・。
てへ。


2007/04/18 01:45 | Comments(0) | TrackBack() | 小説ネタ帳
胡蝶の夢(2)
予想以上に母親と下の妹の口が堅かったのと、二美が一恵の不穏な空気を感じ取ったのか、『二美の彼氏』の正体はいまだ掴めず一恵は些か情緒不安定な日々過ごしていた。
けれどそれを人に気付かせるわけもなく、一恵はいつも通りに生活を送る。一恵は人より優位に立つことはあっても劣位に立つことはない。人に弱味を見せることはあってはならない。
いつでも他人を牽制して生きている一恵には一分の隙も見せてはならない。佐想のトップを目指す彼にとって、それは幼い頃から決めていたこと。
他人には頼らない。
信じるものは己のみ。
自らの足で立ち、自らの手で全てを掴むのだ。
佐想のトップを望むなら、そういう人間であることが前提条件。
誰よりも何よりも聡明でなくてはならない。

本当なら、妹の彼氏ごときで心を囚われていてはいけないのだと分かっている。
だけれど二美は一恵にとって特別で、何者にも代え難い己の半身。
庇護するべき対象で、この世で最も愛する人間なのだ。

今日も二美は一恵の傍に居らず、学校も別々に帰ってきた。
誰もいないリビングに入って目を伏せた。
以前なら必ず二美がいて、寂しくなどなかったのに。
二美がいたから寂しいと思ったこともなかった。
だから、余計に腹が立つ。
一恵の傍を離れる二美も、二美を連れて行く人間も。



「こんにちは、イチいるかい?」
思いのほか深い思考の渦にはまり込んでいたようで、来客にも声を掛けられるまで気付かなかった。
声に現実へ引き戻されて、リビングの入り口を見た。
「ああ、」
誰かと思った。
他人に思案顔など見せたくはない。
だから彼だと分かった時は胸を撫で下ろした。
「あーちゃん。」
幼い頃から刷り込みのように慕っている人。
唯一と言って良い、心を開いている他人。
こうしてふらりと家に遊びに来ては、何をするでもなく一恵や二美や三子の相手をして帰っていくのだが、これでも多忙な大手商社の御曹司というのだから驚く。
一恵はあからさまに頬を緩ませて彼を出迎えた。
「あーちゃん今日は何時までおんの?」
この間は用事があるからとすぐに帰ってしまった。
「ああ、今日は大和さんと友三さんに用事があるから、晩御飯ご馳走になるで。」
「ほんま!?せやったら二人が帰ってくるまでゲームせん?新しいやつ買ってんで~。」
一恵はテレビ台からゲームソフトの入ったケースを出してきて見せた。
「こないだ出たやつやん。最近やってないから鈍ってるかも。」
彼はやる気満々で、一恵の後についてテレビの前に座った。
「あーちゃん、上着くらい脱いだら?」
背広が窮屈そうだったので、一恵は彼に言った。仕事帰りなのだろうか。
パリっとスーツを着込んで、彼も大人なのだなと改めて思った。
それもそのはず、彼は一恵よりも十歳も年上。二十もとうに過ぎた立派な社会人だ。
「いや、いいよ。友三さん帰ってきた時にちゃんとした格好でおりたいから。」
「?ふーん。ほんならエエけど。」
彼がいいなら別に無理強いはしない。
そう思って何も深く考えなかった。彼の言葉を深く捉えなかった。
彼を信頼しきっていた。

一恵すぐにゲームに夢中になる。
だから不覚にも気付かなかった。


隣で彼が小さく溜息を吐いたことを。



^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

不定期に続く春日パラレル番外編第2話。
毎日更新!?と思いきやさてさてそれはどうでっしゃろ?

名前をどこで出していいのか掴めなかったので、名無しのあーちゃんです。
一恵はあーちゃんのこと大好きです。絶対の信頼をおいています。
さてさて、あーちゃんの運命やいかに!?

一恵の好意ランキングとしては
1位 二美
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^(越えられない壁)
2位 祖父
3位 母親(大和)
4位 三子(下の妹)
4位 あーちゃん(尊)
5位 父親(友三)

ってな具合。3位以下は殆ど大差ない。あ、でもその中でも父親は絶対に一番下になるのは確実(笑)
お祖父ちゃんは尊敬の対象というか、一生の目標。

2007/03/06 01:20 | Comments(0) | TrackBack() | 小説ネタ帳
胡蝶の夢(1)
佐想一恵は、最近不機嫌だ。
それというのも彼には双子の妹がいるのだが、彼女に付き合う男が出来たせいだ。
一恵や父親には内緒にしているようだが、何度も携帯電話を睨んではそわそわと落ち着きがなかったり、母親にいきなり料理を習い始めたり。
下の妹もそれにつられて一緒になって台所仕事を手伝って、毎日キッチンは大賑わいだ。
クスクスと漏れ聞こえる笑い声に、興味を向けると含み笑いで返されて、女同士の秘密だからと絶対に下の妹も母親も口を割らない。

生まれた時から常に共に在った双子の妹が、自分から離れていくようで、一恵は我知らず、苛立っていた。


大企業・佐想グループの親族とあってか、一恵も妹の二美も幼い頃から大人に囲まれて育った。
当然、佐想というネームバリューを目的に近づく者は多い。よく似た面立ちの男女の双子は常に一緒で、姿形も愛らしい二人は営利目的ももちろん、それ以外の目的の誘拐にもよく遭った。
その度に二人は互いを互いに守り、二人で生きてきた。
二人は一心同体と言えるほど二人一緒で、二人で互いを補っていた。
それは互いを半身と呼んでもおかしくないほどの仲で、少なくとも一恵は二美に対してそう思っていた。
傍から見てそれは溺愛と呼ぶに相応しい関係だったのだが、他人の目を一恵も二美も気にしない。

気にしていないはずだった。

初めに気付いたのは、中等部に上がる頃。
二美が一緒に風呂に入らなくなった事から。
普通は兄弟であっても思春期の男女が一緒に風呂に入ることはないだろう。
けれど一恵は二美の長く伸ばした髪を丁寧に洗い、乾かして結うのが好きなのだ。別に性的な執着心からではない。
自分は男だから髪を伸ばすことはできない。だから代わりに二美に髪を伸ばしてもらってるという感が強い。
二美も文句は言わないので、今まではそれでよかった。
しかしある日を境に二美は一恵と距離を置くようになった。
きっとそれが二美に彼氏が出来た日だと思う。
風呂だけじゃない、一緒に寝ることもなくなった。
一緒に登校することすら少なくなった。
段々と離れていく二美に、一恵は言い知れぬ恐怖を抱いていた。

二美がいなければ、自分が自分でなくなるような・・・。


「・・・殺してやる・・・。」

ポツリと呟いた独り言。
けれどその色は烈火の如く。
二美を一恵から引き離す輩はすぐさまあぶり出して抹殺してやろう。

キャベツ千切りに悪戦苦闘しながら、どこか楽しそうな最愛の妹を視界に捉えつつ、まだ見ぬ男に殺意を抱く。
佐想一恵、15の春。



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不定期に続く春日パラレル番外編、こっそりブログで更新中。
さて今回の主人公は春日主人公、佐想ひふみのお兄ちゃん。
いてるけどいてない、ひふみの「ひ」。
題名の通り、夢オチです。(最後を言っちゃった!)
自分が胡蝶なのか胡蝶が自分なのか。夢と現実がわからなくなるとかいう言葉です。
あとから付けた割にはぴったりな言葉が見つかって良かった。
昔の人はすごいなあ。

ちゅーかこんなん書いてんとNS更新しろよとか思うんですけど(自分で分かってる!!)思い浮かんでネタ帳に書き始めたら止まらなくなって・・・!
一恵が脳を侵食しちゃうんだもん!
一恵は変態じみてて私の中では割と好き。
書いてるうちにどんどん変態じみていくのがまた哀れ。変態というか狂気っていうか。狂気って書くとかっこいいなあ。

ではまたの更新で。

2007/03/04 23:53 | Comments(0) | TrackBack() | 小説ネタ帳

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