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2024/04/19 18:54 |
胡蝶の夢(1)
佐想一恵は、最近不機嫌だ。
それというのも彼には双子の妹がいるのだが、彼女に付き合う男が出来たせいだ。
一恵や父親には内緒にしているようだが、何度も携帯電話を睨んではそわそわと落ち着きがなかったり、母親にいきなり料理を習い始めたり。
下の妹もそれにつられて一緒になって台所仕事を手伝って、毎日キッチンは大賑わいだ。
クスクスと漏れ聞こえる笑い声に、興味を向けると含み笑いで返されて、女同士の秘密だからと絶対に下の妹も母親も口を割らない。

生まれた時から常に共に在った双子の妹が、自分から離れていくようで、一恵は我知らず、苛立っていた。


大企業・佐想グループの親族とあってか、一恵も妹の二美も幼い頃から大人に囲まれて育った。
当然、佐想というネームバリューを目的に近づく者は多い。よく似た面立ちの男女の双子は常に一緒で、姿形も愛らしい二人は営利目的ももちろん、それ以外の目的の誘拐にもよく遭った。
その度に二人は互いを互いに守り、二人で生きてきた。
二人は一心同体と言えるほど二人一緒で、二人で互いを補っていた。
それは互いを半身と呼んでもおかしくないほどの仲で、少なくとも一恵は二美に対してそう思っていた。
傍から見てそれは溺愛と呼ぶに相応しい関係だったのだが、他人の目を一恵も二美も気にしない。

気にしていないはずだった。

初めに気付いたのは、中等部に上がる頃。
二美が一緒に風呂に入らなくなった事から。
普通は兄弟であっても思春期の男女が一緒に風呂に入ることはないだろう。
けれど一恵は二美の長く伸ばした髪を丁寧に洗い、乾かして結うのが好きなのだ。別に性的な執着心からではない。
自分は男だから髪を伸ばすことはできない。だから代わりに二美に髪を伸ばしてもらってるという感が強い。
二美も文句は言わないので、今まではそれでよかった。
しかしある日を境に二美は一恵と距離を置くようになった。
きっとそれが二美に彼氏が出来た日だと思う。
風呂だけじゃない、一緒に寝ることもなくなった。
一緒に登校することすら少なくなった。
段々と離れていく二美に、一恵は言い知れぬ恐怖を抱いていた。

二美がいなければ、自分が自分でなくなるような・・・。


「・・・殺してやる・・・。」

ポツリと呟いた独り言。
けれどその色は烈火の如く。
二美を一恵から引き離す輩はすぐさまあぶり出して抹殺してやろう。

キャベツ千切りに悪戦苦闘しながら、どこか楽しそうな最愛の妹を視界に捉えつつ、まだ見ぬ男に殺意を抱く。
佐想一恵、15の春。



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不定期に続く春日パラレル番外編、こっそりブログで更新中。
さて今回の主人公は春日主人公、佐想ひふみのお兄ちゃん。
いてるけどいてない、ひふみの「ひ」。
題名の通り、夢オチです。(最後を言っちゃった!)
自分が胡蝶なのか胡蝶が自分なのか。夢と現実がわからなくなるとかいう言葉です。
あとから付けた割にはぴったりな言葉が見つかって良かった。
昔の人はすごいなあ。

ちゅーかこんなん書いてんとNS更新しろよとか思うんですけど(自分で分かってる!!)思い浮かんでネタ帳に書き始めたら止まらなくなって・・・!
一恵が脳を侵食しちゃうんだもん!
一恵は変態じみてて私の中では割と好き。
書いてるうちにどんどん変態じみていくのがまた哀れ。変態というか狂気っていうか。狂気って書くとかっこいいなあ。

ではまたの更新で。
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2007/03/04 23:53 | Comments(0) | TrackBack() | 小説ネタ帳

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