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2024/04/26 08:45 |
胡蝶の夢(3)
「あーちゃん」こと水流尊(つるたかし)は元々、一恵らの両親及び祖父の知り合いで、世間によく名の通った総合商社の御曹司なのだ。
一恵や二美には生まれた時から現在に至るまで、よく遊び相手を務めてもらった慣れ親しんだ『お兄さん』の位置に当てはまる。
良家の子息らしく、物腰柔らかで滅多なことでは怒らない温和な人柄であるが、仕事に関しては実に有能であるらしい。
一恵の尊敬する祖父も、尊には大変目を掛けているようである。

祖父の後継を目指す一恵としては、その祖父に認められた尊を目標にするとともに、いずれは越えねばならない存在と認識している。
しかし一恵は彼にとってプライベートの人間であり、その為に一恵はいまだかつて彼の仕事の顔を見たことがない。
見たことがないだけに、幼い頃から抱いている親愛のみしか今は抱けない。
彼の仕事の顔を見れば、きっと今までの認識を改めて、彼に今までの甘えた感情を抱けなくなると思う。
それが一恵には怖くもあり悲しくもあった。


ゲームに夢中になる尊の横顔をそっと盗み見た。
いつもニコニコしていて、滅多なことでは怒らないが、掛け値なしに甘いわけでもない。
物の分別をわきまえており、一恵や二美が道理に逆らうことをしても困った顔をして穏やかに諭した。
知的好奇心が旺盛な時期の一恵や二美の、両親でも辟易する「なんで?」攻撃にも、尊は時折言葉を選びながら気長に話してくれた。
その殆どが一恵の好奇心を満たす説明で、なるほど今にして思えば彼は非常に賢い少年だったといえる。
加えて子供の扱いにも長けていて、今の一恵が同じように幼児に対応できるかと言われれば、一恵には自信がない。
そんなことで彼に対して劣等感を抱くことはないが、彼の賢さに世話になった身としては手放しに感心することもできない。

二人で夢中になったゲームは一区切りを終え、丁度再戦といったところだった。
屋敷の廊下を誰かが歩く音と一恵が気付いた途端に聞こえた帰宅の声。
そして二人の前に現れた制服姿の二美の姿。
二美が一恵よりも遅く帰ってくることは珍しかった。一恵は成績優秀なので、高校に入学した時から生徒会の仕事や役員の仕事を任され、帰宅時間が自然と遅くなる。対する二美は気ままな新一年生なので全く何の用事もなく、己の気ままに帰って来ることができる。
今日はたまたま何の用事もなかった一恵なので、真っ直ぐ帰ってきたら二美よりも早くなった。同じ時間帯に帰っているはずの二美なのだが今まで何をしていたというのか、心配するのは兄として当然のことといえる。
しかしあまりうるさく言っても、父親のようにうっとおしがられるので、一恵は後でそれとなく聞こうと思った。
「二美おかえり。あーちゃん来てるで。」
「おかえりー。」
一恵と尊は一旦ゲームをストップして、顔を覗かせた二美を見た。
昔から尊が来ると飛んできて、べったり傍を離れようとしない二美なのだが、今日は一度大きく目を見開いたかと思ったら、きまりの悪そうな顔をして自室に向かってしまった。
踵を返す直前に「いらっしゃい。」と素っ気無い言葉だけを送って。
「なんや、アイツ。」
いくら馴染みの尊といえども些か失礼な言動に、一恵は眉根を寄せた。
いつもは誰に対しても礼を欠かないよう厳しく躾けられており、それを実行し続けてきた一恵には同じく躾けられた二美の態度が腑に落ちないのだ。
何故あんなにも余所余所しいのか。
暫く尊は佐想家に足を運んでいなかったが、その分双子で彼に会いに行っていたし何かが変ったというにも彼は普段通りだ。
首を傾げながら、ゲームを再開するべく尊に振り向いた。
けれど尊の視線は一恵に向くことはなく、二美の去った後を眇めた目で追っていた。

尊が我に返ったのは、一恵が勝手にレースゲームを再開して、ぼんやりしていた尊の機体が大破してからだった。


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忘れた頃に続くパラレルワールド短編。
水流尊の人となり。
でもこのあーちゃんはいたいけな少女に手を出す鬼畜野郎です。
油断して騙されてはいけません。(何が)


えー、とある異世界迷い込みのネット小説を読みました。その中で主人公が飼っていた犬のことを思い出すシーンがあるんですけど、泣くほどの事でもないと思うんです、けど泣いてしまいました。
動物(特に犬)の話にはとんと弱いです。忠義な犬の話はあまり好きではありません、だって悲しくて泣いてしまうから。
逆に動物虐待の話ははらわたが煮えくり返ります。動物の命を軽んじて無体なことをする輩は、同じ目に遭って死ねばいいと思います。おっと過激発言でしたかな?
でも、自分も同じ目に遭わなけりゃ、他人の痛みを理解できない人間が増えてきているのもまた事実。
無知は罪であることを知らない人間が多すぎる。
ホームレスを殺すことが正当であると言った高校生はどこへ行ったか。
高校で道徳を教えるという話だが、親の道徳観念はどうなっているんだろう。そういうものって、家庭の中で育まれていくものではないのかな。
おっと、なんだかいつもと様子が違う日記になってしまいましたよ。
犬の話からどこへいってしまったんだか・・・。
てへ。

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2007/04/18 01:45 | Comments(0) | TrackBack() | 小説ネタ帳

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