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2019/05/21 15:58 |
胡蝶の夢(7)
やっとおわりますた。今回はこっちに後書きをば。
下においてありますんで日記読みに来てる方はクリックドゾー
さてさてやっとこさ最後まで書きました。長かった・・・
今回単独で超絶長いんでやんの。
さて、誰の夢にリンクしてたのでしょうか!?ってか、全部読んだ人は分かるんじゃないかな。「イチエ」読んだら分かるだろー。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
気合を入れて。

そう心に込めて、勢いよく顔を上げた。
ほとんど同時に扉が金属音をさせながらゆっくり開いた。
そこは何度も通った、マンションの廊下があるはずだった。

けれど扉が開いた先には人が立っていて、それも一恵が会いに行こうとしていた、正にその人物が。
当然、不意打ちに心臓を鷲掴みされたかのごとく、一恵は目を見開いて驚いた。驚いて、叫びながら飛び退った。
「ぅうわあああ!!!!・・・あーちゃん・・・。なんで。」
驚いたがすぐに気持ちを立て直し、半ば睨むように尊を見上げた。
悔しいことに、一恵はまだ成長期前で、尊の背丈とは遠く及ばない。けれど、そんなことで挫けていては、今日ここへ来たことにも負けてしまう。
一恵は気丈にあろうとして、無意識に顎を反らしていた。

「なんでって、マルベニに電話もろたから、迎えに来たに決まってるやろ。」
特に気分を害した様にも呆れた様にも、笑顔を浮かべているわけでもなく、何の感情も浮かべない顔で、尊はそれだけ言うと自分の家に向かって歩き出した。
一恵はそれを、逡巡の後に追いかけた。



靴を脱いで、家の主に言ったつもりではないが、いつもの癖で小さく「お邪魔します」と呟く。
「いらっしゃい。」
けれど家の主はちゃんと聞いていて、やっぱり癖のように、例えるならどこかの店の店員のように、決まりきった言葉を口にする。そこに歓迎の想いが含まれているのかは、今の一恵には分からない。
なにせ、彼にとって一恵は今現在のところ「敵」なのだから。
けれどきっと尊のことだから、そんなこと関係は無いはず。大人だから、一恵のことは弟のようだと思っているはずだから、疎ましく思うはずが無い。
一恵はそう信じたい。

リビングに通されて、ソファに座って、尊がコーヒーを淹れに台所へ行こうとするのを慌てて止めた。
コーヒーはインスタントじゃないから、待ち時間が長くてきっともどかしい。すぐにでも、話をしたいのに。そんなせっかちなところが、また子供なのだろうか。
ソファの脇に尊が腰を下ろして、一恵はごくりと口内の唾液を嚥下した。
こんなに真剣な話を、この人とするのは生まれて初めての事かもしれない。途轍もなく緊張して、我知らず膝の上で握られた拳が更に硬く結ばれた。

どのようにして切り出そうか。
さまざまな言葉が浮かんでは消え、消えては浮かんで。
自分の生み出す沈黙がこんなにも痛いと思ったことは無い。
緊張は焦りを生み、焦りは更なる緊張をもたらし。
張り詰めた空気を破ったのは、やっぱり尊のほうで。

「イチは、反対なんか。・・・僕らのこと。」

呟くように発せられた言葉は、どこか暗い空気を孕んでいて、伏せた瞳はそれを縁取る睫毛で色が見えない。

「あーちゃんの、返答次第では。」
一恵の言葉に尊が顔を上げた。
今まで見たことも無い、それこそ小さい頃に過ぎたいたずらで彼を怒らせた時でさえ、こんな真顔は見たことが無い。
それだけで彼の誠実が窺い知れようと言うものだが、一恵が欲しいのははっきりとした言葉。態度で気持ちを汲んでやるなど、例え出来てもしてやるわけにはいかない。
「いくら俺とあーちゃんの仲でも、兄貴が妹の恋人、品定めするんは当たり前やろ。」
一恵は普段彼には見せたこともないようなそっけない態度をとった。
彼に対しては本意ではないが、自分の態度くらい偽るのはこれから将来いくらでもしなくてはいけないこと。それに彼はこの先、一恵の会社にとって味方にも敵にも容易になり得る存在で、旧知の間柄でも隙を見せるわけにはいかないのだ。
それに対して尊は多少の寂しさを感じたようだが、眉尻を下げただけに留まった。一恵も好きでやってるのではないことくらい、長い付き合いで分かっている。

「けど、俺も極悪非道な鬼やない。二美に泣かれたら、どんだけ反対せなアカンくても結局は許してしまうんやって、自分で分かってるんやけどな。」
一恵は我知らず視線を下げた。そこには『妹に弱い兄』を自嘲する呟きに見せかけた、彼の心細さが滲み出ていた。
一恵と二美は双子だから、生まれたときから一緒で、尊は双子が生まれたときから一緒にいる。一恵は二人が一等好きだったし、尊も二美も一恵と互いのことが一等好きだった。
けれどその輪はいつの間に崩れてしまったのだろう。いつの間に、二人の最愛は互いになってしまったのだろう。
取り残された一恵は、どうして生きていけばいいのだろう。
駄々をこねれば簡単なのかもしれない。子供のようにわがままを言えば、優しい二人は繋ぎとめられてくれるかもしれない。一瞬口を開きかけて、寸での所で一恵はぐっと口をつぐんだ。
そして改めて尊を見据える。
今はそう、二美の兄として。
「あーちゃ・・・いや、あんたは俺の大事な二美をどうしたいん?ただの遊びとか、俺の前でしゃあしゃあと言うんやったら、ここで殺したる。」
脅し文句を言えば余程の馬鹿者でない限り、たとえ嘘でも『遊び』とは答えないだろう。
尊は声も立てず、口の端を歪めて笑みの形に作った。だからと言って笑っているわけでもないのだが。
「遊びなわけないやろ。遊びやったらそもそも二美は選ばんし、そんなん学生の時に終わったわ。」
純情で恋愛初心者の二美では遊び相手には適さない。それに遊びで手を出して簡単に許される家の子でもない。
「生まれたときから大事に育ててきたんに、そう簡単に手放せるわけないやろ。二美は僕のや、一恵にも渡せへん。」
尊の執着心を初めて見せられて一恵は衝撃を受けた。
尊は生まれたときから二美を見ていたというのだろうか。二美だけを、『大事に』。
では、一恵は?一恵は何だと言うのだ。一恵は彼にとって『大事に』する者ではなかったのか。むしろ二美と世界を共有する一恵は、もしかすると邪魔な存在だったのか。
予想される事実だけで卒倒しそうだった。いままで純然たる親愛をひたすら抱いてきたのに、酷い裏切りだ。
いや、裏切ってなどいない。彼には最初から二美しか見えていなかったのだから。
絶望が心を占領しだす。
なぜだか涙が出そうだった。
しかし泣くわけがない。泣いてはいけない。そう思って拳を固く握り締めた時に、背後でか細い声がかけられた。
「イチ・・・?」
振り向くと、二美が目をこすってリビングの入り口に佇んでいた。まるで寝起きのように部屋の明かりを眩しがって、瞬きを繰り返す。
「ああ、起きたの?こっちにおいで。」
どうしてここに二美がいるのか、予想していなかった出来事に一恵は自分の片割れを凝視して固まる。尊はそんな一恵をチラリと見てから、甘い笑顔で二美を手招きした。
けれど二美は戸口から軽やかに飛び出すと、一恵のもとに来たのだった。
「なんでイチがここにおるん?怒ってるんとちゃうかったん?」
一恵の隣に座ると、二美は一恵の瞳を覗いた。
差し出されて引っ込みのつかない手を如何ともしがたい様子の尊を横目で見遣って、一恵は二美に向き直った。
「お前こそ、なんでここにおんねん。」
何をしていた。とは聞く勇気がなかった。まだ全てを受け入れられる覚悟はできていないのだ。
「イチをどうやって説得するか、尊さんと話し合ってたんよ。」
二美は別段、隠すでもなくあっけらかんと答えた。そしてもそもそと一恵の隣を離れると、向かいの尊の手の中に納まった。
二人は顔を見合わせて微笑みあう。恋人同士特有の甘い空気を見ていられなくて、一恵は我知らず顔を逸らしていた。
また胸を孤独が占めだす。
「イチ。」
二美が一恵に声をかけた。一恵は半ば反射的に二美の声に反応する。
顔を上げた先には二人が並んで座っていて、狭間で互いの手がしっかりと握られていた。
「イチは私と、あーちゃんが、付き合うのって反対?」
一恵は首肯だけで答えた。
二人の仲を反対するというよりは、自分を除け者にしたからふて腐れているだけだということは認めたくないが分かっている。けれどそれを告白するつもりは毛頭ない。
「わたし、あーちゃんのことずっと好きやったの。小さい頃からずっとずっと、あーちゃんのことだけ、見てたの。私はあーちゃんと一緒にいたい。私のお願いでも、一恵は反対するの?」
うるうると涙目で懇願されたら、妹に弱い一恵にはもうどうすることもできない。
二美の確信犯は分かっているのだが、それでも無碍に扱えない自分の甘さが恨めしい。
結局は二美ですら、一恵ではなく尊を一番にみていたということなのだ。
一恵は力なく溜息を一つ吐くと、弱々しく声を吐き出した。
「もう、いい・・・。」
二美と尊は一恵の呟きを正確に聞き取れず、声を合わせて疑問符を浮かべた。
一恵は苛立ちを感じながら、さっきよりかは大きな声で喋った。
「・・・もう反対なんかせえへんよ。二人の惚気聞いてたら、ぎゃあぎゃあ言うてるんがアホらしなってきたわ。二人とも素で惚気んねんから目ぇも当てられへん。」
やさぐれ気味に吐き捨てると、二人には当て擦りに聞こえたのかいくらか空気が和らいだ。
実質二人の関係を認める発言になったのだが一恵はもうどうでも良かった。
一恵が今まで大切に思ってきた二人は一恵のことなど二の次程度にしか思っていなかったのだ。報われない思いを抱えて一恵の心はうつろだった。
一恵はおもむろに立ち上がり、帰宅の意を告げた。二美が共に立ち上がらないのを見ると、彼女はまだここで恋人と甘いひと時を過ごすつもりなのだろう。
知らぬ間に眉間にしわが寄っていた。それを隠すために一恵はそそくさと二人に背を向けたのだが、ふいに二美から声が掛けられた。
「一恵。」
普段は「イチ」としか呼ばない彼女が改まって「一恵」と呼ぶ。何か魂胆があるのだろうかと一恵は内心ぎくりとした。
「一恵にも早くできると良いね、一恵だけの大切な人。」
無邪気な言葉が一恵の心臓をえぐったことに彼女は気付いていない。
そう、一恵にも二人に負けないもしくはそれ以上に心を預けられる人間ができればいいのだ。
そうすれば心が満たされる。
一恵は二美の言葉に返事もできず、尊の家を半ば逃げ出すように出ていった。
雨上がりの夕空には夕日と対極した位置に、赤にも負けない虹が掛かっていた。
なぜだか胸が締め付けられて、一恵は歩きながら泣いた。
泣いて泣いて、声は出さなかったけれど、目から涙がどんどん出てくるので、涙をどんどん出した。
頬を伝った涙は、たくさんアスファルトの上に落ちて、雨に濡れた地面では見分けがつかなかった。

どうやって帰ったかはよく覚えていないが、幸いにして家の中に人の気配がなかったので、一恵はさっさと自室に引きこもりベッドにもぐりこんだ。
しばらくは誰にも会いたくない。そう思ったから、部屋にも鍵をかけておいた。
子供のように泣き疲れて眠ってしまうのを待っていた。
うとうとしだした頃、夢うつつの狭間で以前聞いた女の声を思い出した。このまま眠ればまた聞けるのかもしれない。今度は本人に会えるのかもしれない。
暗闇に溶けていく視界の中で、さっき二美が一恵の背中に呼びかけた言葉を再び聞いた。

一恵だけの大切な人



・・・か・・さ・
・・・かず・・・


「かずさ、起きて。かずさ。」

まどろみながら薄目を開けると一賛(かずさ)の恋人が見下ろしていた。
「・・・なに」
まだ覚めきらぬ思考でぶっきらぼうに訊ねると、彼女はホッと胸をなでおろし相好を崩した。
「ずいぶんうなされてたから、悪い夢でも見てるんじゃないかと思って。」
そう言って彼女は一賛の髪を梳いた。空気が流れて頬が冷え、自分が汗をかいていたことを知る。
一賛は彼女の手を掴み、もう片方で自分の額の汗を拭った。
一息ついた後、掴んでいた手を引いて彼女を腕の中に仕舞い込んだ。
「千鶴・・・。」
「なあに?」
くすくすと笑い声が漏れる。
いつもの日常。いつもの彼女の声、感触。なぜだか感慨深くて、一賛はそっと彼女の髪に頬をうずめた。
「ずっと俺の傍にいてくれる?」
「やだ、起きてたの?狸寝入りなんて意地悪なことするのね。」
「?」
千鶴の言い分に心当たりがなくて、一賛は首をかしげた。彼女は一賛が寝ている時に同様のことを言ったようで。
しかし一賛の様子がそれを覚えていないことを物語る。
「まあいいわ、もう一回言ってあげる。ちゃんと聞いててね。」
「ん。」
千鶴は一賛の瞳を捉えながら顔を綻ばせた。
「私だけはあなたの傍にいてあげる。ずっとずっとずーっとよ。」
一賛も顔を綻ばせた。
そして二人の唇が重なり合う。

「なんか、すげー寂しい夢を見てた気がする。」
「どんな?」
「千鶴がいなくて、寂しかった。父さんと母さんは二人の世界だしさ、いつものことだけど。俺の千鶴がいなくて、泣いてた。」
「大丈夫よ。こっちが本当だから、私はちゃんと一賛の隣にいるわ。」



・・・Fine・・・




^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

お分かりになったでしょうか!?
水流家の長男にリンクしていたのでした~!ドンドンパフパフ
まああの夢は夢でパラレルというか、カズサの中のイチエの願望というか。無かったことに出来ないイチエの執着心というようなものがカズサの夢で具現化したという設定。
カズサと恋人・千鶴の話はまたいつか書きたいと思っています。
設定とか色々あるんですけどネタバレはやっぱりアカンですからね。
千鶴さんの名前は千鶴さんでないとだめなんですよ。お父さんの名前からとってるので千鶴になるんです。千鶴でないとだめなんです。
千鶴の両親の話は一般的にはハッピーエンドとは言いがたい結末なので書く気はないですが、話はあるだけはある。20くらいの年の差ですが。
息子さん出したからこれでやっとバカ漫画描ける~~!
今度は新婚編だ!春日漫画!
では何か異論反論オブジェクション(NEWS23)などありましたらコメントドゾー
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2007/12/20 02:16 | Comments(0) | TrackBack(0) | 小説ネタ帳

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