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2024/05/04 05:51 |
一恵と二美と尊と
右手に一恵、左手に二美。尊は双子の手を引いて、佐想の庭を散歩する。
昔は平等院鳳凰堂みたいな家だったけれど、大和が友三と結婚する頃には緑が鬱蒼と生い茂る庭と家に建て替えられた。

尊は双子を連れて庭のブランコまでやってきた。
一恵と二美は二人で機嫌よくブランコを漕いでいる。
木漏れ日の下で幼子のはしゃぐ声が響いて、尊は近くのベンチにまったりくつろいだ。
自分の家はなんとなくくつろげない。母親が細かいことに煩い人なので、いつでも気を張っていなければならないのだ。
だから尊はしょっちゅう家を抜け出して、こうして双子のいる佐想家に逃げてくるのだ。
ここではぼんやりしてても誰も何も言わないし、畳の上にゴロゴロするのは気持ちがよい。
陽気に知らずうとうとしていたのか、冷たい手のひらが頬に触れて尊は我に返った。
目を開ければ飛び込んできたのは二美の顔。
双子の顔はソックリで、髪が長くてかろうじて二美だと判別できた。
「どしたん?」
見れば二美はブランコを降りて尊の元へやって来ていた。向こうでは一恵がマイペースにブランコをまだ漕いでいた。
「ふみ、あーちゃんと結婚しる!」
突然のことにまどろんでいた意識はハッキリしたが、動揺に上手く脳が働かない。
「ふみがいっしょにいてあげる。あーちゃんのおそばにいてあげる。」
「え?え?え?」
何を突然言い出すのだろうか、この幼児は。
尊は幼児の戯言なのに余裕もなく上手に受け答えできないでいた。

「ふみ!ふみ!やだやだ!!」
すると後ろから一恵が走り寄って、自らの片割れに飛びついた。
「けっこんなんかしちゃいややよ。ボクをおいていっちゃいややよ。ボクはふみがいちばん好きやし、ボクはふみとけっこんする!」
泣き出す兄にふみは困って頭を撫ぜた。
「いちをおいてったりはせんよ。ふみもいちがいちばんよ。」
「じゃあ、ぼくとけっこんしてよ。」
「うんいいよ。」
お互いに自分の片割れに抱きつく双子は傍目から見ると微笑ましいことこの上ないが、尊にはなんだか面白くない。
だけど仲の良い兄妹の間に入るわけにもいかず、ただそれを見てるしかない。
さっきまで自分と結婚するとか言ってたくせに、一瞬にしてその言葉を反故にしてしまった。自分はそんな程度の価値しかないのだろうか。
生まれたときから一緒にいる双子の兄には叶わないかもしれないけれど、相当に好かれている自信はあった。
だからここまでアッサリ負けるとも思ってなかっただけに割りあいショックである。

ぼんやり双子のラブラブっぷりを眺めていると、不意に一恵が顔を上げて尊の方を見やった。
そしてほんの少し、口の端を持ち上げて、嘲笑ったのだった。
「!」
若干3歳にしてあのような腹黒い顔ができるとは将来が恐ろしい。
そして嘲笑を向けられた尊に対する感情も、恐ろしい。

佐想一恵は侮れない。


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一恵が生きていたら。
のお話。
佐想双子3歳と尊13歳。
尊の感情とか、ふみの感情とか、少し違いがありますが、ifの世界なのでこれはこれ。

一恵は超シスコンの腹黒。
妹絶対主義。
二美も超ブラコン。
尊と一恵の攻防戦が楽しそう。

一恵が生きてたら、尊と二美はフツーに幼馴染→婚約→結婚になってたと思います。きっと一恵に煽られて尊は佐想家にずっと通ってたと思います。
そんで一恵も妹絶対主義なので、妹の気持ちを尊重して最後は尊との仲を認めて(折れて)くれるんじゃないかな。
でもジビジビ尊のことをいびるはずだ。

う~~ん、一恵オイシイなあ。
また書いてみたいです、一恵。
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2007/02/26 01:05 | Comments(0) | TrackBack() | 小説ネタ帳

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